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東京地方裁判所 平成6年(ワ)22479号 判決

原告

友利修

ほか四名

被告

毛利泰義

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して、原告ら各人に対しそれぞれ金一四八万円及びこれに対する平成四年四月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告らの、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

一  被告らは、連帯して、原告ら各人に対しそれぞれ金二四八万二九五二円及びこれに対する平成四年四月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用の被告らの負担及び仮執行宣言

第二事案の概要

一  本件は、交差点において横断中の被害者が普通貨物自動車にはねられて死亡したことから、その相続人が普通貨物自動車の運転者等を相手に損害賠償を求めた事案である。

二  争いのない事実

1  本件交通事故の発生

事故の日時 平成四年四月一五日午後三時五分ころ

事故の場所 東京都世田谷区上用賀六―一―一先の交差点

加害者 被告毛利泰義(以下「被告毛利」という。加害車両を運転)

加害車両 普通貨物自動車(品川四〇み三八四七)

被害者 友利せん

事故の態様 被害者が前記交差点の横断歩道を横断歩行中、右方より同交差点に進入してきた加害車両にはねられた。

事故の結果 被害者は、本件事故により三時間後の同日午後六時一九分に死亡した。

2  責任原因

(1) 被告毛利は、加害車両を運転していたが、本件事故につき前方不注視等の過失がある。

(2) 被告株式会社小泉硝子店は、加害車両の保有者である。

3  相続関係

原告らはいずれも被害者の子であり、法定相続分の割合に従い被害者を五分の一ずつ相続した。

4  損害の填補

原告らは、平成六年七月一三日に自賠責保険から次の内訳どおり合計一四四九万〇三四〇円の填補を受けた。

(1) 入院治療費 一二万二八四〇円

(2) 葬儀費用 八〇万〇〇〇〇円

(3) 逸失利益(警察共済年金分) 四〇六万〇〇〇〇円

(4) 慰謝料 九五〇万〇〇〇〇円

(5) 諸雑費及び文書料 七五〇〇円

三  本件の争点

本件の争点は原告らの損害額である。

1  原告らの主張

(1) 入院治療費 一二万二八四〇円

(2) 葬儀費用 一二〇万〇〇〇〇円

(3) 逸失利益

〈1〉 警察共済年金分 四〇六万〇〇〇〇円

〈2〉 アパート経営による分 二六一万四七六四円

被害者は、東京都世田谷区上用賀三―一〇―七においてアパートを経営し、アパートの廊下等の清掃、不動産業者や修理業者との連絡等を実施して、年間一四六万七三二〇円の収入を得ていた。被害者は事故当時八〇歳であつたから、その就労可能年数を四年、生活費控除率を五〇パーセントとして新ホフマン方式により算定。

(4) 慰謝料 一八〇〇万〇〇〇〇円

(5) 諸雑費及び文書料 七五〇〇円

(6) 弁護士費用 合計九〇万円(原告一人当たり一八万円)

2  被告らの主張

被告らは、特に、次の点を主張する。

(1) 被害者の逸失利益

アパートの賃料収入は、不動産収入であり、被害者の死亡後も発生していて死亡により減収が生じたのではないから、逸失利益性を否認する。

(2) 慰謝料

被害者の年齢、既に配偶者も他界している等の家族構成も考慮すると一二〇〇万円が相当である。

第三争点に対する判断

一  入院治療費 一二万二八四〇円

被告らは、入院治療費の額を明らかに争わない。

二  葬儀費用 一二〇万〇〇〇〇円

甲五ないし一一(枝番を含む。)によれば、被害者の葬儀のため、二四二万二七五五円を要したことが認められる。このうち、一二〇万円を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

三  逸失利益

1  被告らは、警察共済年金についての逸失利益が四〇六万〇〇〇〇円となることは明らかに争わない。

2  原告らは、被害者のアパート経営による分についての逸失利益を主張し、甲一二ないし一四(枝番を含む。)によれば、被害者は、原告ら主張の場所においてアパートを経営し、被害者自らアパートの廊下等の清掃、不動産業者や修理業者との連絡等アパート賃貸管理業務全般を行い、年間一四六万七三二〇円の収入を得ていたことが認められる。

しかし、アパートによる賃料収入は基本的には不動産収入であり、前認定の被害者の労働と相まつて右収入が得られたとしても、労働対価分の割合はさほど多くはないものと推認され、独立した逸失利益として認めることは困難である。もつとも、右収入中、被害者の労働による部分のあることは否定することができないから、この点は、慰謝料で考慮することとする。

四  慰謝料 一六〇〇万〇〇〇〇円

被害者の年齢、横断歩道上の事故であること、前示のとおりアパート経営に関する逸失利益を認めなかつたこと、その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、被害者の死亡に対する慰謝料としては一六〇〇万円が相当である。

五  諸雑費及び文書料 七五〇〇円

被告らは、諸雑費及び文書料を明らかに争わない。

六  損害填補後の損害額

前認定判断の損害額の合計は、二一三九万〇三四〇円であるところ、原告らが自賠責保険から合計一四四九万〇三四〇円の填補を受けたこと、原告らが法定相続分である五分の一ずつ被害者を相続したことは争いがないから、各原告の損害は、いずれも一三八万円となる。

七  弁護士費用

本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に鑑み、原告らの本件訴訟追行に要した弁護士費用は、原告ら各人につき、それぞれ一〇万円をもつて相当と認める。

第四結論

よつて、原告らの本訴請求は、被告らに対し、連帯して、原告ら各人につきそれぞれ一四八万円及びこれに対する本件事故の日である平成四年四月一五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。

(裁判官 南敏文)

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